想いを宿して、幸せを運ぶ。水のように柔らかなAQUA SILVERのかたち
物語性のあるモチーフとデザイン性、繊細な細工で人気のAQUA SILVER(アクアシルバー)。ファッションの聖地・原宿で、30年の長きにわたり、若者たちの支持を集めている。
時代を超えて人々に愛され続けるデザイン。その根底に流れる想いを、創業時からのデザイナー・三浦氏に聞いた。
始まりはストリート
AQUA SILVERは、現オーナーである JACOB ABUTBULが始まり。彼が旅人だったことから当初は海外買い付けのアイテムを扱っていましたが、オリジナル商品を作りたいと相談され、デザイナーの私と合流。1993年1月に、原宿キャットストリートにAQUA SILVER1号店をオープンしました。 当時のキャットストリートは裏通り的な道でしたが、知る人ぞ知る店といった形でリピーターが増えていきました。

アクアとは水を意味するラテン語です。水はすべての生命体にとって必要な存在であり、その色は無色透明。私達の創造するアクセサリーが、身につける人のスタイルに水のように溶け込み、色がつくことによって輝きを増し、かかせない存在になってほしいという願いを込めています。ブランドビジョンの「自分らしさに溶け込み、誇りと象徴にり、全ての人の幸せを願い、いつまでも輝き続ける。」はここから来ています。
トレンドの最先端に店を構えながら、その根底には古来の叡智や思想が流れている。変わる時代、変わらない価値観、変わらない想い。AQUA SILVERのアクセサリーは、水のような柔軟さで、人々に寄り添い続けている。
すべてのモチーフに意味がある
私たちのアイテムにはすべてに意味をもたせたいと考えています。ジュエリーは長い歴史のなかで、何かの象徴や自分の内面性を表すものとして機能してきました。ファッションアイテムとして成立するのはもちろんですが、意味はちゃんともたせたい。共感してくださる方に選んでもらえればと思っています。
たとえば「人を幸せにするジュエリーをつくりたい」から生まれたのは、幸せのシックスペンスコイン。靴のなかに1枚忍ばせると幸せになれるという言い伝えをもつ、イギリスの古いコインがモチーフです。些細なことを幸運と感じる、その瞬間に身につけていれば、誰かにとってのラッキーアイテムになれる。人にプレゼントをするときも「幸せになってほしい」という想いはきっとありますよね。シックスペンスコインで、その気持ちをお手伝いできればいいなと思っています。

AQUA SILVERで最初に生まれたコレクションはArabesque(アラベスク)。唐草模様として、日本人にも馴染みのあるデザインです。生命力のある植物から、繁栄や永遠をイメージしました。翼を象ったFeather(フェザー)は、自由・解放・飛躍を表現。新しいことに挑戦する人、勢いがほしいという人に、飛躍のアイテムとしておすすめしています。

素肌にまとうアクセサリーは、自分という存在に一番近い場所に存在する。何かに心を動かされたとき、誰かを愛しいと思ったとき。自分を鼓舞したいとき。AQUA SILVERのアイテムには、その背を押したいという祈りが込められている。
デザインの具現化は、職人との二人三脚
デザインを決定したら、渋谷の工房で職人と一緒に原型を制作します。金属の切り貼りや削り込みですね。私が考えたものを具現化するのだから、なるべく近場で、直接目の届く場所で監修したい。創業以来ずっと、渋谷の工房で制作しています。デザインから商品化まで、大体半年くらいでしょうか。

時にはあります。6ペンスコインのネックレスに、中心部が回転するギミックを入れようとしたときは「回さなくてもいいじゃないか」と言われました。可動部分の細かな調整が必要ですし、パーツの数だけ生産工数も増えますから。でも私は回転で永続性を表現したかったので「回すことに意味があるんです」と。無理を通した分、ヒットしたときはうれしかったですね。

職人技の精緻な細工。その裏には、デザイナーの譲れないこだわりがある。目の届く場所で、モチーフに託した想いを逃さぬように。細かな調整を重ねながら、今日も、渋谷の工房で新たなアイテムが生み出されている。
作る楽しさと届ける喜び
千利休の残した言葉に「稽古とは一より習い十を知り 十よりかえるもとのその一」という言葉があります。デザイナーとして日々、技術の向上を目指しながら、駆け出しだった頃の「作る楽しさ」や「誰かに届ける喜び」は忘れないようにしたい。そうやって作り続けているということが、お客様に伝われば何よりも嬉しいです。
アクセサリーって、必要不可欠なものじゃない。けれど長い、途切れない歴史がある。そこには誰かに作ってあげたい、贈ってあげたいという想いや、誰かを忘れないために持っていたい、自分のアイデンティティを表したい、といった気持ちがあるはず。
私たちは、想いを込められる物づくりを通して、誰かが幸せになるお手伝いがしたいと考えています。アクセサリーは、つける人がいてこそですから。

AQUA SILVERのデザイン面を一手に担う三浦氏。訥々とした語り口に、アクセサリーへの愛情がにじみ出る。日々高みを目指すその瞳の奥には、アクセサリー作りの楽しさに目覚めた駆け出しのデザイナーが、今も確かに息づいていた。
それぞれに意味をもつ、AQUA SILVERのアイテム。根底に流れるのは、誰かを幸せにしたい、気持ちを届ける手伝いをしたいという真摯な願いだ。
水のように柔軟に、自分らしさの追求を手助けする。AQUA SILVERのアクセサリーは、十人十色の想いとともに、それぞれの人生に溶け込んでいる。